“羨ましい”は、特殊な差別

思春期に、憧れた男がいた。




香川という中学の同級生だ。

イケメンで、背も高く、スポーツ万能。
イジメを許さず、真面目に部活や学校行事に取り組む、絵に描いたような好青年だ。

勉強はそんなに出来なかったが、
そこが可愛く思えるくらい完璧な男だった。

ファンクラブがあったし、
芸能事務所からも、何度もスカウトされていたらしい。

当然、全女子からモテていた。




羨ましかった。

僕は、背の高さなら負けてなかった。
でも、それだけ。
人柄の良さ、顔面偏差値、運動神経…
完敗過ぎて、戦うこともしなかった。


僕は、香川と深く話したことがない。

同じ公立の中学に通い、なんなら小学校から一緒。会話は、社交辞令的な”おはよう”くらい。


どんなアーティストが好き?
漫画とか読むの?
彼女いるの?
高校はどこに行くの?


パーソナルな質問は、一度もしたことがなかった。


嫌ってた訳じゃない。
羨ましすぎた。
住む世界が違うと思っていた。


僕みたいな人間が話しかけていい相手じゃない。

もっと可愛い女子と話したいだろうし、僕が香川なら、そう望むはずだ。





羨ましいは、特殊な差別だ。






20歳になり、成人式を迎え、地元の中学の集まりに参加した。

みんな綺麗になってたし、カッコよくなってた。

色んな人と話した。

ほとんどの奴が高校卒業後に就職して、僕みたいに大学に通ってる奴なんて少ないことがわかった。

担任だったモテない若ハゲ先生は、しっかり結婚し、お子さんもいた。写真を見ると、激かわだったことがわかった。


そして、香川と話した。



「久しぶりだね!芦名あれ覚えてる?笑笑」



僕が中学の文化祭でやった漫才が面白かったと、もっと当時話してみたかったと、僕に興味を持ち、どんなアーティストが好きか、漫画は読むのか、彼女はいるのかを話しかったことがわかった。

短い間だったけど、初めて香川と深く話した。

香川は、今悩んでることをたくさん話してくれた。

更に、当時部活で悩んでいたこと、学校生活で悩んでいたこと、恋愛に悩んでいたことを話してくれた。

びっくりした。
こいつ、悩みあったんだ。って。

真面目に聞いて、真面目に答えた。
面白くねー。と笑いながら言われた笑

話せば、話すほど
やっぱすげー良いやつだった。


もっと羨ましくなった。
そりゃ、ファンクラブ出来るわ。








僕は、まだ自分と比べて、”羨ましい”で片付けてる人間がたくさんいる。

僕は、190cmあるから、160cmが羨ましい。
僕は、汗っかきだから、汗をかかない人が羨ましい。
僕は、歌が下手くそだから、歌が上手い人が羨ましい。
僕は、お酒が弱いから、お酒が強い人が羨ましい。


けど、160cmの男の子に、身長コンプレックスがあると聞いたことあるし、
汗をかかない女性に、自分は病気なんじゃないか?と悩んだことを聞いたし、
もっと上手くないと歌手ではやっていけないという悩みを聞いたことがあるし
お酒が強すぎて、酔えないという悩みを聞いたことがある。



“羨ましい”人間にも、ちゃんと悩みがある。
ちゃんと僕たちと同じように、人間で、悩みながら生きている。


その悩みを、分かりやすく、解決したい。
救いたい。


僕の”羨ましい”である高身長。
これで悩んでる人は、たくさんいる。

その人達に向けて、服を作りました。
10日から販売します。原価で。
赤字覚悟。

救えりゃそれでいいし、笑えればそれでいい



0コメント

  • 1000 / 1000