生身vs時代
ある、舞台に取り憑かれた女優さんのお話。
平成が終わろうとしてる今よりもっと前、
昭和ど真ん中、
その時代に、とある田舎町で、
彼女は、生まれた。
小学生にも関わらず、あまりに顔立ちが整っていた彼女は、町の人気者だった。
みなが、彼女の成長を楽しんでいた。
彼女自身は、静かに田舎で暮らしていたかったのだが、周りが、それを許さなかった。
ラジオオーディション。
24歳までの女性を対象とした全国放送ラジオ番組のDJを決める企画だった。
中学2年生、当時14歳だった彼女に、担任の先生が「オーディションを受けないか?」と声をかけた。
町のみんなは、彼女に人気者になって欲しかった。
彼女は、全力で嫌がった。
「私は、静かに暮らしたい。」
やる気のない彼女だが、一次審査が”指定された短い文章を録音するだけ”と聞き、担任の先生のお願いということもあって、嫌々ながら引き受けた。
収録が始まる。
彼女は、やる気がなかった。
感情を込めず、淡々と指定された文章を、ただただ読んでいく。
担任の先生は、それを怒ったが
「これしか出来ません。」
と嘘をつき、何ども感情を殺し、淡々と指定された文章を読んだ。
担任の先生も根負けし、仕方なく、それを東京のラジオ局に郵送した。
1週間後。
2次試験の案内が届く。
彼女は、驚いた。
「なんで!?」
東京のラジオ局の担当の人は、
「これが14歳!?声に色気がある。感情がないように聞こえるが、どこか寂しさがある。会ってみたい!早く東京に来てください!」
彼女の思惑は、失敗に終わった。
仕方なく、彼女は東京に出向いた。
そして、彼女にあったラジオ局員は、驚愕した。
今、活躍しているどの女優よりも、美しかったからだ。
14歳の女子中学生が、だ。
その日に、オーディションは、終わった。
合格者は、彼女だ。
それからの彼女は、ラジオDJ、女優、歌手、時にはアイドルみたいなことまで、なんでもやった。
というより、やらされていた。
「私は、静かに暮らしたい。」
そんな彼女は、今でも女優活動をしている。
やらされていない。
自らの意思で続けている。
女優の三田佳子さん。
77歳。
何故、彼女は今でも女優業を続けているのか。
それは、ある歌手の影響だった。
高校3年生、18歳の彼女は、田舎町から1人東京で暮らし、芸能活動をしていた。
というより、させられていた。
事務所のマネージャーが持ってくる仕事は、多種多様。やり方もわからず、ただがむしゃらにこなしていく。
そんなある日、いつも通りの仕事が来た。
「ラジオ番組に女性のゲストが来るよ。歌手の人。すごい良い歌なんだよ?聞いといてね。」
マネージャーにそう言われ、彼女は嫌々そのレコードを聴いた。
(声、綺麗。良い曲。けど、普通じゃん。)
彼女の率直な感想だった。
番組が始まる。
嫌々で覚えた軽快なトーク
嫌々で覚えたリスナーが聞きたいような質問をぶつけながら、
嫌々ながら笑顔で話した。
番組が終わったと、同時に、歌手の人が彼女に声をかける。
「レコード聞いてくれて、ありがとうございます!今度、生で聴きに来てください!」
ライブのチケットをもらった。
彼女は、行きたくなかった。
マネージャーからは、行け!と言われた。
彼女は、嫌々、ライブに足を運んだ。
東京の中でも、普通のライブ会場。
お世話にも、お客さんが入ってるとは言えない。
(え?大丈夫?)
ガヤガヤもしてない会場の明かりが消え、彼女が前にもらったレコードの曲の前奏が聴こえてきた。
(もう聞いたことあるよ笑)
彼女の率直な感想だった。
徐々に明るくなる舞台の中央に、あの歌手がいる。
歌い始めた。
その瞬間、涙が出た。
(え?なにこれ?)
とてつもなく、泣いた。
自分が人気女優であること、
自分が普段、嫌々仕事していること、
自分が田舎から1人暮らししてること、
自分が好きになった年上の男性に裏切られたこと、
自分が今この場にいること、
全て、彼女の頭の中には、なかった。
あるのは、目の前の歌手の歌声だけ。
生の歌声だけ。
(レコードで聴いた時は、何も感じなかったのに、なにこれ。涙が出てくる。)
説明が出来ない。
その場にいない人には、伝えることの出来ない。
生で見ないと、わからない。
(私、こういうことがしたい!!!)
彼女の率直な感想だった。
ラジオではなく、映画ではなく、生身で戦うことの素晴らしさを彼女は知ってしまった。
「時代は、変わる。
しかし、舞台の素晴らしさは永久に変わらない。」
今日、明日、あさって、
僕は、エグスプロージョンのまちゃあきさん演出の舞台に出させて頂きます。
セリフはありません。
「は?そんな舞台面白い訳ないじゃん!」
とは、もうみなさん言いませんよね?
生で観に来てください。
説明出来ないもの、お見せ致します。
詳しくは、ツイッターで
#KAKERU
とお調べください。
PS 三田さんが感動した歌手の方のお名前をど忘れしてしまいました笑
大事なところなのに、すいません。
さぁやっていこうか!
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