人は死んでも、言葉は遺る。
恩師が死んでいた。
恩師と言っても、
7〜8回しか会ったことないけど。
僕は、20歳の頃、
川崎のバーでアルバイトしていた。
僕は、仕事が恐ろしく出来ないのに、
“デカすぎる”。
店からしたらお荷物くん。
それでも、
その店の人やお客さんの川崎の皆さんは、
「この店で働きたい!」
という僕の想いを受け入れ、絶えず応援してくれた。
頑張ったけど、ちょっと難しかった。
あんまいい働きは出来なかったなー
そんな素敵な人達が訪れる川崎のバーの常連さんに、“アネさん”と呼ばれる人がいた。
アネさんは、
40〜50歳くらいの男の人で、何かの社長らしいが、“アネさん”という可愛い名前からは想像出来ない程、外見は怖すぎた。
背はそんなに大きくはないが、完全に
ドンキーゴングに出てくるキングクルールそのものだった。
一度だけ喧嘩しているところを見た事があるが、死ぬ程早かった。
明らかに喧嘩慣れしていて、怖いよりもかっこいいがそこにはあった。
(怖すぎて、足がすくんで、
止められなかっただけだけど笑笑)
アネさんは、いつも
鍛高譚のクランベリージュース割りを飲むのが好きで、9:1で飲む。
鍛高譚が9だ笑
それをガブガブ飲んでいた。
主な名ゼリフとして、
「秀は、目ん玉くり抜いたことあるか?」
「人なら5秒で殺せる。」
「なんか楽しいことないかなー?」
がある。
勘違いしないでほしいのは、
川崎はこんな人しかいない。笑
全員頭ぶっ飛んでる。
全員発言怖い。
言葉遣い良い奴なんて1人もいない。
いたら、そいつは川崎の人間じゃない。
(言いすぎ笑)
けど、
川崎の人は、変な人もいるが、
芯があり、素直で、心の優しい人が多い。
アネさんも、そうだった。
ある日、いつものようにアネさんがカウンターで飲んでいると、入り口が荒く開いた。
「はぁはぁはぁ、、社長!!!どうすんすか!?あいつ逃げましたよ!!!」
息を切らして入ってきたのは、アネさんを
“社長”と呼ぶ若いスーツの人だった。
スーツの上からでも筋肉の隆起が分かるほど、ガタイの良い喧嘩の強そうなお兄さんだった。
「あっそうか。」
「そっか!じゃないでしょ!!!
あいつ700万持って逃げたんすよ!!」
割った。
普通に拭いてたグラスを落として、
ドラマみたいに割った。
それでも、若い人は僕の方を一度見ずに、アネさんを睨んでいる。相当怒っているようだった。
僕は、頭の中で興奮しながら考えていた。
いや、
「700万!?」
を100回くらい頭ん中で繰り返しているだけだった。
700万を持って逃げた人間がいる。
その事実が身近で起きすぎていて、
っていうか今目の前に被害者の人がいてイメージ出来なかったが、普通に刑事事件だ。
ニュースで報道されてもおかしいはない。
僕は、アネさんが好きだった。
そして、目の前で顔面の血管が浮き出るほどブチギレてる若い人もアネさんのことを好きで、尊敬していたと思う。だからキレている。
その場にいたほとんどの人間が、
アネさんが好きで、名前も知らない700万円を盗んだ奴のことを恨んでいた。
けど、アネさんだけは違った
「だから、もういいつってんだろ!」
「いや、でも!!!!」
「俺が信じたんだからいいんだよ。」
「え?」
全員が黙った。
アネさんが喧嘩していた時のスピードよりも早く、皆、アネさんのその一言にやられた。
我に帰るのが1番早かったのは、
若い人だった。
「いやいやいや!!!!!!
ダメですよ!!会社の金っすよ!!どうすんすか!?」
「だーーーかーーーら!
いいつってんだろ!?何でもいいよ!ラーメン屋でも、おでん屋でもなんかして、700万円また稼げばいいんだろ?
俺はな!俺が信じた奴に裏切られたんだよ!だったら悪いのは、俺だろうよ!
あいつに700万円持っていかしちまった俺が悪いだろ。」
アネさんは、ガチでそう言っていた。
若い人も、僕も、もう何も言えなかった。
怖くてじゃない。
男としてカッコ良すぎたからだ。
「俺が信じたから裏切られてもいい。
悪いのは、俺だ。」
この言葉を今大切にしている。
僕は、よく人のせいにしてしまう事があるが、この言葉を思い出す度に、自分の行いを反省するようにしている。
アネさんに今も救われているという話を昨日行きつけの居酒屋で話した。
すると、オーナーさんが
「2年前に死んだぞ?知らなかったのか?」
7年前にアルバイト辞めてから一度も会ってなかったが、まさか亡くなっていたとは。
僕は、700万円が帰ってきたか聞いた。
「帰ってきてねーよ。
けど、その後ウハウハよ」
事業が成功し、
結構お金は稼いでたみたいだ。
700万円キャッシュで盗まれて、
追わず、そっからプラスまで持っていくって、どんな人間だよ笑笑
笑ってしまった笑笑
凄すぎる。僕なんてまだまだだった。
帰り際、オーナーさんに呼び止められた。
「秀、明日夜何やってんだ?」
「あ、明日は21:30から配信の仕事があります。」
「そか、」
「え?なんかあるんですか?」
「今日、あいつの2周忌なんだよ。」
なんか偶然ってあるもんなんだな。
今日も、
アネさんの言葉を借りて、
人を信じられるように、まず、
自分の行いを信じてもらえるように、一生懸命生きてます。
世話なりました。
遅くなってすいません。
ASHiNA
僕は僕のやれることを、一生懸命やります。
本日21:30から絶対見てくれ!
んで、服買ってくれ!頼むから!
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